キャパシタ(コンデンサ) 

日本では普通コンデンサと呼ばれますが、正しくはキャパシタです。一般的にはどちらでも構いません。ここでは呼びなれたコンデンサを使用します。

コンデンサは電荷を蓄えたり放出したりする役割を担います。構造を見て頂ければ分かりますが極板と極板の間が切れていますので直流は通しません。交流は通過させますが通過する電流の周波数とキャパシタの容量に依存する抵抗値を持ちます。

最も単純な構造はコンデンサの模式図や記号に見られるように2枚の金属板を向かい合わせた構造になります。真ん中が断ち切られた形になっていますので直流を通すことができないのは容易にわかると思います。

この金属板間に蓄えることのできる電荷の量を「容量」と言います。単位は「F:ファラッド」です。

極板の間には通常、空気が挟まれますが、空気を挟んだだけでは大きな容量を得ることが出来ませんので、間に絶縁体を挟んで大きな容量を得ようとします。効果的に容量を増やすため電荷を蓄えやすい絶縁体を挟みますがこの絶縁体の事を誘電体と呼びます。

誘電体の材質や構造によって様々な種類のコンデンサが作られています。

 

(1)誘電体による分類

ア.セラミック・コンデンサ

 

誘電体にアルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウムの磁器を用いたものです。誘電体により温度依存性が小さいもの、大きいものがあります。微量元素を混ぜることにより温度係数「0」のものも作ることが出来ます。チップ型のように小型のものは内部構造を積層型にしています。

 

無極性であり、高周波特性は良好です。

 

形状は円盤型やチップ型が一般的です。

 

主としてディジタル回路のバイパス用、アナログ回路の温度補償用、結合用として使用されます。

イ.オイル・コンデンサ

誘電体として絶縁油を含侵した紙を使用しているものです。紙に木材パルプを使用したものを特に紙(ペーパー)コンデンサと呼びます。

高周波特性は普通、形状は円筒形。主としてアナログ回路に使われます。

左は通常型のオイル・コンデンサ、右は高圧用のオイル・コンデンサです。

ウ.マイラー・コンデンサ(ポリエステルコンデンサ)

ポリエステルフィルムを誘電体として使用しているものです。形状は角盤型、高周波特性はあまり良くありません。

主としてアナログ回路に使われます。誘電体損は他に比較して大きくなります。

俗にマイラーと呼ばれます。

 

エ.ポリプロピレン・コンデンサ

ポリプロピレンフィルムを誘電体として使用しているものです。形状は潰した円筒型で高周波特性をはじめとする諸特性は良好です。

正確な容量が作りやすく、簡易型の基準コンデンサとして使用可能です。耐圧性に優れます。PPコンと呼ばれます。

 

オ.ポリスチレン・コンデンサ

ポリスチレンフィルムを誘電体に使用したものです。形状は円筒型。高周波特性等は優秀ですが耐熱性に劣ります。透明なフィルムを電極と一緒に巻き込んでいる様子がよく分かります・機械的強度も得にくいという欠点があります。俗にスチコンと呼ばれます。現在は製造されていないそうです。

 

カ.マイカ・コンデンサ

誘電体にマイカ(雲母)を用いたコンデンサです。雲母の薄くはがれる性質を利用したものですが誘電体の厚さを極端に薄くすることが出来ません。そのため外形がやや大きくなります。諸特性は優秀です。温度係数が小さく一定で、容量の精度も高く、高周波特性、耐圧性、耐熱性に優れていますが古いもの(鋳込み型と呼ばれるキャラメル型のタイプのもの)は外装のベークライトが耐湿性に弱いため経年変化で容量の値が変わってしまうという問題があります。

 

古い時代は高周波用と言えばマイカ・コンデンサでした。

 

ディップドマイカは外装に使われている樹脂を改良したものです。かなり高価です。

 

俗にマイカと呼ばれます。

 

電極として銀を蒸着したシルバードマイカと呼ばれるものもあります。一般的なマイカも特性は優秀ですがシルバードマイカは更に優秀です

 

上図は左からキャラメル・マイカ、ディップドマイカ、シルバードマイカです。

 

 

キ.チタン酸コンデンサ

酸化チタンを成型して誘電体としたものです。高周波特性、安定性に優れます。形状は円筒型、稀に円盤型のものがあります。

大容量のものは作りにくいという欠点があります。

チタコンと呼びます。

 

ク.電解コンデンサ

電極表面を化学処理することで絶縁体或いは半導体の薄膜を形成し、これを誘電体としたものです。非常に大きな容量のものを作れますが、一部を除き有極性でコンデンサとしての諸特性も芳しいものではありません。

 

用途は電源系、低周波系に限られます。使用にあたっては耐圧、周波数に注意をする必要があります。

 

耐圧を守らなかったり極性を逆に接続したりすると発煙、発熱、電解液の漏出等の不具合が生じます。ひどい場合には爆発し周囲に電解液を服の内容物が飛び散ることもあります。

 

電解液は腐食性が高いので漏れたり飛び散ったりした場合には周辺の回路を腐食させ更なる故障の原因となることもあります。

 
 

リード線の引き出し方でアキシャル型とラジアル型があり有極性のためいずれも外装のマイナス側に黒色の帯或いは特有の目印が設けられている。またラジアル型においては前述の被害を少なくするために頂部のケース(通常アルミ)に+型、K型の切り込み(完全に切っているわけではない)を設けて内部のガスを逃がし爆発を防止できるようにしています。

この切り込みを防爆弁と言います。

電極表面を化学処理することで絶縁体或いは半導体の薄膜を形成し、これを誘電体としたものです。非常に大きな容量のものを作れますが、一部を除き有極性でコンデンサとしての諸特性も芳しいものではありません。用途は電源系、低周波系に限られます。使用にあたっては耐圧、周波数に注意をする必要があります。耐圧を守らなかったり極性を逆に接続したりすると発煙、発熱、電解液の漏出等の不具合が生じます。ひどい場合には爆発し周囲に電解液を服の内容物が飛び散ることもあります。電解液は腐食性が高いので漏れたり飛び散ったりした場合には周辺の回路を腐食させ更なる故障の原因となることもあります。

 

 

リード線の引き出し方でアキシャル型とラジアル型があり有極性のためいずれも外装のマイナス側に黒色の帯或いは特有の目印が設けられている。またラジアル型においては前述の被害を少なくするために頂部のケース(通常アルミ)に+型、K型の切り込み(完全に切っているわけではない)を設けて内部のガスを逃がし爆発を防止できるようにしています。この切り込みを防爆弁と言います。最近の電解コンデンサは容量誤差が±20%が普通ですが、以前のものは+の方が50%とか100%とかでした。古いものを再利用する場合は注意が必要です。コンデンサメーカにより表示方法は異なっている可能性はありますが、一般的には容量の表示の後にMとかkの記号を入れてMは±20%、kは±10%の容量誤差であることを表しています。10μF±20%なら「100M」(10010*10010μFの意味)というふうに、あるいは「10μFM)」と標記しています。

 

(ア)アルミ電解コンデンサ

最も一般的な電解コンデンサで電解コンデンサ又はケミコン(ケミカルコンデンサの略)といえばこれを指します。大容量を得やすく電源回路の平滑或いは時定数の設定用に用いられます。

アルミ箔の表面に形成した酸化薄膜(酸化アルミニウム:絶縁体)を誘電体として用います。

 

 

酸化被膜を密着させるために極板の間に電解液を含侵した紙を挟み、酸化被膜を形成した極板がプラス側になります。極性を間違えると薄膜が破壊され使用不能になり、最終的にはデバイスが破裂、発煙することも否定できません。

 

電解液の溶媒や電解質に工夫を施したものは誘電体膜がなんらかの理由、例えば逆接続、で破壊された場合に自己修復機能が働いて誘電体膜を補修することが出来るのが特徴の一つです。だからと言って逆接続して良いということにはなりません。電解液の代わりに固体電解質を使用するものも開発されています。

 

電解コンデンサの故障時のモードはオープンであり被害の極限を計っています。さらに極板の構造を変えて相対する極板の双方に酸化被膜を形成し無極性としたものもあります。極性がないので取り扱いは容易ですが、同じサイズの有極性のものの半分しか容量が得られないことと、無極性だからと言って急激に極性が変化する、例えば交流回路には使用できないことに留意しなければなりません。このタイプのものはノン・ポーラーと呼ばれ外装にNPNon-Polar)或いはBPBi-Polar)という表示があります。この他、真空管回路用として一つの筐体に2つ以上のアルミ電解コンデンサを封入したものもあります。このタイプのものはその形状からブロックコンデンサとも呼ばれます。形状は円筒形で縦型(ラジアル型)、横型(アキシャル型)があります。

 

ラジアル型のものを除き外部ケースはマイナス側電極に接続されているのが一般的です。

 

(イ)タンタル電解コンデンサ

誘電体として金属タンタルの粉末を焼結して陽極を作り、更に電気化学反応により表面に酸化タンタル薄膜を形成し誘電体としたものです。アルミ電解コンデンサより小型で周波数特性がよく、電源平滑用やノイズ除去のバイパスコンデンサとして用いられます。欠点はタンタルが希少金属であるため価格が高いことや供給不安につながりやすいことです。更に、これがタンタルコンデンサの最大の欠陥と言われていますが故障した場合は必ずショートモードであるため周辺の回路を巻き込みやすく、回路設計にそれを防止する工夫が必要だということです。アルミ電解コンデンサとは異なり陽極側にマーキングがあります。間違えないようにしなければなりません。

(2)構造による分類ア.平板型

2枚以上の電極を向かい合わせに配置したもの。極板の面積をあまり大きくできないため小さい容量に限定されます。極板を2枚だけ持つというコンデンサは使われないことはないのですが一般的ではありません。可変容量コンデンサ(俗にバリコン)やトリマコンデンサにこの構造が使われています。

上図は左からバリアブルコンデンサ(バリコン)、高耐圧送信機用バリコン、誘電体にポリエステルフィルムを用いたポリバリコン(PVC)です。中央の軸を回して容量を可変します。

イ.巻き込み型

2枚の電気伝導体箔と誘電体膜を交互に重ねて巻き込んだもの。極板や誘電体に箔状やフィルムを使用したコンデンサにこの構造が用いられています。コイルと同じ構造になるため高周波特性が悪くなりやすいのですが、誘電体の改良が進み、フィルムを使用していても高周波特性が優秀なものもあります。

 

ウ.円筒型

酸化チタンを円筒形に焼結させて製造されたチタコン以外にはこの構造を持つものはありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エ.積層型

平らな極版を積み重ねてその間に誘電体を挟んだ構造です。大容量を得やすい、外形を小さくしやすい等の特徴を生かして近年のセラミック・コンデンサはこの構造を持つものが一般的です。

出来上がった素子は通常直方体になります。そのまま表面実装用に使われることもあればリード線を引き出したに後に樹脂で封止したものもあります。

コンデンサとしての諸特性は優秀です。

オ.貫通型

平板に直交した方向に電流を流せるような構造を持ったコンデンサです。管型とチップ型の2通りあります。管型はシールドケースから線を引き出すのに向いています。チップ型はよりプリント基板への実装が容易になっています。

 図は両方を兼ねたものでシールドケースが銅や真鍮で出来ていれば直接半田付けが可能です。プリント基板の場合もプリント基板に直接実装が可能です。

 

ねじ止めの構造を持ったものもあります。


(3)コンデンサの合成

抵抗と同じようにコンデンサも合成して望みの容量のものを合成することが出来ます。

コンデンサの極板の面積と容量の間には次の関係が成り立ちます。

・ 極板の面積を大きくすれば容量  が比例して増加する。

・ 極板の間隔(距離)を近づけれ  ば容量が増加し、遠くすれば容  量が減少する。

・ 極板の間隔を近づければ耐電圧  が低下し、遠くすれば耐電圧が  向上する。

コンデンサは電荷を蓄える、放出するのが基本的な役割ですから電荷を蓄える極板の面積が大きくなれば溜め込める電荷の量が増えることは容易に理解できると思います。次に極板と極板の距離についてですが、極板の+側からマイナス側に電気力線と言うものが通ります。この電気力線は極板間の電圧が高いほど、また極板と極板が近いほど本数が多くなります。電気力線の本数と溜め込める電荷の間には比例関係があるため、極板と極板が近いほどその容量は大きくなります。遠ければ遠いほどその容量は減少します。

コンデンサで忘れてはならないのは耐電圧です。極板と極板の間が真空であろうと空気だろうと誘電体を挟んだ場合であろうと高い電圧を負荷すればどこかで絶縁が破れ放電が始まります。極板間で放電するということは連続的に電荷が移動している、すなわち直流の電流が流れていてコンデンサとしては役に立たない状態ですので絶縁が維持されている範囲で使用しなければなりません。合成の時にも常に念頭に置いておく必要があります。これまでは特に触れてきませんでしたがすべてのコンデンサに耐圧が規定され表記されています。

いよいよ合成に入ります。抵抗の場合と同じように直列に接続した場合と並列に接続した場合を考えます。

ここで2つのコンデンサをC1C2とします。

 

直列に接続した場合はC1の右の極板とC2の左の極板は導線でショートした状態になりますから、有効な極板はC1の左の極板とC2の右の極板になります。

 

従って単に極板間の距離が延びたことになり合成したコンデンサの容量は減少することになります。

 

合成容量をCとすれば

 

並列に接続した場合はC1及びC2の右と左の極板がそれぞれ接続されていますので、面積が増加したことになります。

合成容量をCとすれば

と言うことになります。耐圧は直列の場合は極板間が広がったことになりますので増加し、並列の場合は極板間は元のままですので耐圧も元のままです。ただし、直列の場合は合成容量Cに印加された電圧がC1C2の容量に応じて分割されてそれぞれのコンデンサに加わりますのでそれに応じた耐圧を持ったコンデンサを使用する必要があります。

(4)コンデンサが交流を通すわけは?

コンデンサが直流を通過させない理由は前に述べましたが、では何故、交流はコンデンサを通過できるのでしょう。極板と極板の間は切断されていますし、ここに誘電体を挟んでいても絶縁体ですから電気は流れません。問題は電荷が印加される電圧に応じて増えたり減ったりすることにあります。

コンデンサに電気をつなぐとプラスの電圧が与えられた極板に接している誘電体(空気も誘電体です。)の接している側に誘電体が持っているプラスの電荷が集結します。マイナスの電圧が与えられた極板に接している側にはマイナスの電荷が集結します。この電荷の出口は極板に繋がっているリード線だけで絶縁体(誘電体)の中を通過することができません。通過出来たら絶縁体ではありません。

ここで、コンデンサの両極に交流電源を接続してみます。交流は電圧が上下するだけでなくその流れる向きもある周期をもって変化します。変化と言っても自由に向きが変わるわけではなくコンデンサのリード線の上でしか変わることが出来ないので左から右、右から左と変わることになります。

つまりプラスとマイナスが交互に両極に印加されることになります。誘電体の最初プラスが接続された側にはプラスの電荷が集まっていますが流れる向きが変わるとマイナスの電気が加わりますので溜まっていたプラスの電荷はマイナス極に引き寄せられてコンデンサの外に流れ出します。反対側の極でも同様なことが生起し、溜まっていたマイナスの電荷はプラス極から流れ込むプラスの電荷を受け止めます。溜まっていた電荷が出きってしまうと次は先ほどとは逆にマイナスが印加されている側にマイナスの電荷が集結しプラスが印加されている側にプラスの電荷が集結します。この状態をコンデンサから見れば極性が反転した状態です。この状態遷移を繰り返していきますので、コンデンサに接続されている外部回路からはあたかも交流の電気がコンデンサを通過して流れているように見えることになります。

電子回路においては各素子(デバイス)の動作する点を決め、動作のためのエネルギーを供給している直流の上に増幅したり伝達したりしたい信号(交流成分)が重畳した形になっていますので、回路の途中をコンデンサで切って交流成分だけを取り出して使用するといった形で、或いは不必要な交流成分だけを回路の外部に逃がす、廃棄するといったことが行われています。そしてその目的に適合したコンデンサを選択して使うことになります。詳しくは後程、回路のところで触れます。