部品

 

回路を構成するために用いられる「もの」を部品(デバイス)と言います。いろいろな用途に応じて様々な部品があります。部品の用途、得ようとする効果を良く判断して最適な「もの」を選んで使用して下さい。

 

(1)抵抗

 

電子の動きを邪魔して通過する電流を制限しようとする部品です。超伝導を除き、一般に物質は必ず抵抗を持ちます。流れようとする電流を邪魔するため必ず損失が生じ熱を発生します。熱が発生すると抵抗値が変化しますので通常使用の範囲では安定的に抵抗値を確保できる材料や構造を持つように設計されます。金属は温度が高くなると電気抵抗率が増加し、半導体は電気抵抗率が低下します。

 

 

電流は抵抗体の中を無理やり通過しますので必ず雑音が生じます。

邪魔する材料としては炭素(カーボン)、金属、酸化金属等が使用されます。

流れを邪魔するだけですから交流回路、直流回路どちらにも使用されます。単位はオーム(Ω)です。

抵抗器を表す記号は1997年までは上図の上段、ギザギザにリードを付けたシンボルが使われていましたが、現在の、国際規格のIEC 60617を元に作成されたJIS C 06171997-1999年制定)ではギザギザ型の図記号は示されなくなり、長方形の箱状の図記号で図示することになっています。

この図記号の使用には法的拘束力は無いためJIS C 0617制定以前に作成された図を修正する必要はなく、また国内だけで使用するのであればどちらを使用しても問題はありません。

ただし、国際間の貿易(受発注)においてはIECに従わなければ受発注できないことになります。

 

ア.カーボン抵抗

 

通常の電気、電子回路で最も一般的に使用される抵抗です。絶縁体であるセラミック(磁器)に炭素の粉末を塗り付け、その長さ、厚みをコントロールすることによって所要の抵抗値を得ています。

 

最終的に抵抗体は帯をセラミックコアに斜めに巻き付けた形になります。

 特殊なものですが炭素の粉末を焼き固めたものもあります。

 絶縁性の塗料で塗装し、抵抗値を表す色帯(カラーコード)や数字でその値を表示しています。

 (図では右側から茶、黒、赤、金ですので10×102=1kΩ 精度5%と言うこととなります。)

 

 

外形によってP型、L型などがありますが最近のものは大体P型です。雑音や周波数の特性は良くありませんが価格が極めて安いためよく使われます。

 L型の抵抗は現在では殆ど使われていません。高周波回路に使う場合はP型を推奨します。

 

イ.金属皮膜抵抗

 

 

一般的にはカーボン抵抗と同様に、セラミック素材に金属粉を塗布或いは金属を蒸着して所要の抵抗値を得ています。外観はカーボン抵抗と同様ですがP型の形状を持ちます。

雑音の発生が少ない、耐電力性が高い、同じ耐電力ならばカーボン抵抗に比べて小さいという特徴があります。略称は「キンピ」です。

カーボン抵抗に比べてやや高価(2倍程度)です。

ウ.酸化金属皮膜抵抗

 

金属抵抗と同じですが、抵抗体に酸化金属の被膜を使用しています。耐電力性は金属抵抗に優ります。金属皮膜抵抗と同様カーボン抵抗に比べてやや高価です。

略称は「サンキン」です。

 

 

エ.巻き線抵抗

絶縁体の上に金属線を巻き付け、その長さによって所要の抵抗値を得るもので、特に大電力損失が予想される個所に使用されます。形状はL型が一般的です。

大型のものはリード線に頼らず保持金具を使って固定します。

 

 

 

オ.ソリッド抵抗

 樹脂製のケースに炭素粉末を封入してリード線をつけたもの。特性はカーボン抵抗に似ているが雑音がやや大きく構造から高周波特性は良好です。

温度特性はあまり良くありません。また、経年変化による抵抗値の変化が大きく古いものはあまり信用できません。

1970年代以降一般的に使われたので古い電子機器、おもちゃでは見ることが出来ます。

もし修理に持ち込まれたおもちゃにソリッド抵抗が使われていたら直ちに現在のカーボン抵抗に交換したほうが良いです。

 

カ.ホーロー抵抗

巻き線抵抗の一種で抵抗体を保護するためにホーローを外装として使用しています。自分が発生する熱に極めて強いので大電力用として使用されます。外形はL型に似ています。

 巻き線抵抗と同様に、大型のものはリード線に頼らず保持金具を使って固定します。

 

キ.メタルクラッド抵抗

巻き線抵抗の一種で抵抗体を絶縁した上で金属製の外装に封入しています。放熱板に取り付け、放熱を確保した上で大電力用途に用いられます。

一般に放熱板への取り付け金具も金属製外装に準備されています。

 

ク.メタルグレーズ抵抗

金属や酸化ルテニウム等の金属酸化物とガラスを混合しアルミナ(酸化アルミニウム)基板などに高温で焼結させたもの。安定性、耐環境性などに優れる。P型形状の抵抗器の他チップ部品に多用されています。

 

ケ.セメント抵抗

 抵抗器本体をセラミック製のケースに収めセメントで封止したもの。

 大電力用途に用いられます。

 抵抗体には金属巻き線や酸化金属皮膜が用いられています。

 外見は白色の直方体です。

 

コ.金属箔抵抗

金属の塊(インゴット)を圧延して作られます。温度係数が極端に低く、極めて高精度ですが非常に高価です。

 

サ.金属板抵抗

金属の板(線)をそのまま抵抗として利用します。mΩオーダーの極めて低い抵抗値で利用されます。

シャント抵抗として分流器などに用いられます。

 

シ.ガラス抵抗

超高抵抗値(100MΩ~1TΩ)が得られます。

 

ス.集合抵抗

複数の抵抗器を一つのパッケージにまとめたものです。抵抗アレイとも言います。

 

図記号は下のとおりです。(新JIS記法)

 

コンピュータ回路などの終端に用いられます。

 

 

セ.その他

抵抗体は電子の動きを制限できればなんでも良いので、特殊なものになりますが「水」、「炭素棒」等も使われることがあります。形状も用途に合わせて様々です。

 

水は基本的に電気を通しませんので水を抵抗体として使う場合はイオン化しやすい塩類を混合して所要の抵抗値を得るようにします。

(水が導電性を持つのは不純物としての塩類が含まれているためです。純水は殆ど電気を通しません。)

抵抗の初めのところで述べましたが導体は必ず抵抗を持っていますので、非常に低い抵抗値を持った抵抗を要求される場合は「銅線」も使われます。

また、抵抗値を可変(可変、半固定)できるようにしたものや最近では超小型のチップ形状を持ったものもあります。

 

ソ.抵抗の合成

おもちゃの治療ではあまり使う機会はないと思いますが、望み通りの抵抗がない場合は2つ以上の抵抗を用いて希望通り或いは希望に近い値を持つ抵抗を合成することが出来ます。

抵抗体とその値の間には次の関係が成り立ちます。

・抵抗体の長さを長くすると抵抗値は増加し、長さに比例する。

・抵抗体の断面積を広くすると抵抗値は減少し、断面積に反比例する。

抵抗は電荷の流れを邪魔するだけですから邪魔する距離を長くすれば電荷が通り難くなることは容易にお分かりいただけることと思います。また通り道を広くすれば電荷が通り易くなることも容易にご理解頂けることと思います。

 

ここで二つの抵抗をR1R2とします。

下の図のとおりR1R2を直列に接続した場合は足し算になります。

  

 

合成抵抗RはR=R1+R2になります。

 逆に通り道を広くすれば電荷が通り易くなる、つまり抵抗が減ることになりますので並列に接続すれば抵抗値がさがります。

なぜそうなるかは後で詳しく説明します。

 

これによって、ある条件下ではという前提が付きますが、二つ以上の抵抗を使って任意の抵抗値を合成することが出来ます。