シクナル・インジェクターの製作

インジェクターはスピーカーのテストにも使える。

概 要

トランジスタを2個使用した簡単な回路検査用低周波インジェクターを作ります。

最近は音の出るおもちゃのスピーカードライブ回路もICに含まれているものが出てきたりして、活躍の場が少なくなっていますが、マイク回路やスピーカーの検査などにも使用できますので作ってみましょう。

トランジスタ回路と単3乾電池1本を組み込んだ、使いやすいものを作ってみたいと思います。

 

用意するもの

記号

品  名

備  考

Q1

トランジスタ2SC1815

1個

NPN トランジスタであれば何でも良い

Q2

トランジスタ2SA950

1個

PNP 小電力用トランジスタであれば何でも可

R1

抵抗 100kΩ

1個

1/4W 炭素皮膜形でよい

R2

抵抗 10kΩ

1個

1/4W 炭素皮膜形でよい。

C1

コンデンサ 0.022uF

1個

コンデンサ

SW

タクトスイッチ

1個

スイッチ付きケースの場合は不要。

 

ユニバーサル基板

1枚

紙エポキシ片面、小さな切れ端でもよい。

 

単5乾電池

2個

アルカリ乾電池

 

テスター棒

1個

(無くても良い)

 

ミノムシクリップ

1個

黒 ()()で良い (無くても良い)

 

赤黒並行ビニール線

 1

プローブとマイナス側の接続用コード。

 

単3乾電池ケース

1個

4本用スイッチ付が良い。

配線図

製作用配線図

 

回路の説明

 このシグナル・インジェクタは低周波の可聴信号を発生するもので、この信号を増幅回路の入力に加えて、回路が正しく働いているかをチェックするための道具です。

 トランジスタを2個使用した簡単な発振回路です。少しは電子回路らしいものを作ってみるのも楽しいでしょう。回路は簡単ですし、小さく収める事が出来ますから色々な形のものに収める事が出来ます。

 

 回路を簡単に説明します

 R1C1による充放電周期で発振する回路を作っています。電源スイッチをONしますとC1R1を通して少しずつ充電されて行きます。そして、Q1のベース電位が上昇して、ある時点でトランジスタのベース電流が流れますとQ1ONします。

 Q1がONしますと、Q2のベース電位が下がり、ベース・エミッタ間に電流が流れて、Q2ONします。

 Q2ONしますとQ2のコレクタ電位が上昇して、R2の一端がHiとなりますから、探針に信号が現れます。

 同時にC1を急速に放電します。そしてC1が放電しますと、Q1のベース電位も下がりますからQ1OFFします。Q1OFFすればQ2のベース電位も上昇しますから、Q2OFFする事になります。Q2のコレクタ電位もグランドレベルに急速に下がります。探針の信号もグランドレベルに戻ります。

 言い換えると短い時間のHiシグナルが抵抗R2の両端に現れる事になります。

 そして最初に戻り、またR1を通してC1の充電を始めるのです。

 この周期で電源スイッチをOFFするまで発振を続けます。

 

 お気付きかと思いますが、探針は出力回路と直接繋がっています。従って相手の回路に接触しますと、その回路の影響を受けます。

その結果、発振周波数が変化したり、時には発振が止まってしまう事もありますので、承知して使用してください。

 直流的に遮断したい場合は、探針にコンデンサを直列に接続して使います。

 

使用方法

使い方は簡単です。しかし、ある程度はおもちゃの電子回路を把握していないと思うようには行きません。

 

おもちゃに使用されているプリント基板を見て、どれがICで、どれがトランジスタであるかが分かり、トランジスタの基本的な働きやピン()の区別が、ある程度理解できませんとチェックすることは出来ません。

このシグナル・インジェクタを作るに当っても、トランジスタの基本的なことが学習できたと思います。複雑そうに見えても一つひとつを見ればそれほど難しいことではありませんので、これを機会に興味を持ってプリント基板を眺めてみてください。

トランジスタのピン()が分かったとして話を進めます。

 

 まずはおもちゃの電源をOFF状態で、スピーカーが正常なことを確認します。もちろんテスターでも出来ますが、せっかくですから作りたてのインジェクタを使ってみましょう。

 スピーカーの(-)側にインジェクタの黒のミノムシクリップを接続します。そして(+)側にインジェクタの探針部分を触れてみます。正常であれば「ピー」と言う音がスピーカーから出るはずです。

 スピーカーの正常が確認できましたら、黒のミノムシクリップをプリント基板のグランドか、電源のマイナス側に接続し直します。

おもちゃの電源を入れます。

 最初はスピーカーのドライブ回路をチェックしてみます。回路図で'B1'と書かれた部分に探針を触れて、スイッチを押してみます。すると、スピーカーから大きな音で発信音がなります。スピーカーのドライブ回路が正常に動作し、信号を増幅したからです。

トランジスタの増幅回路でベースとエミッタ間に信号を加えてやると、入力した信号が増幅されてコレクタ側に現れたのです。

 S8050はよくおもちゃに使われている海外製のトランジスタです。代替品はNECのD1615か東芝のC2655などがあります。

 

闇雲にベースにインジェクターを当てると言うのも問題がありますが、インジェクターの信号は短いパルス状の信号ですので短時間であれば問題ないでしょう。