ラジコンカーの前進/後進と左折/右折、モーターの切替
1.乾電池でDCモーターを回す
小学校の理科の実験などで、乾電池を使ってモーターを動かしたりしませんでしたか?今回は、ラジコンカーを動かすための動力をモーター(DCモーター)で得ようと思うので、先ずはモーターを動かすことから始めてみることにします。
単一、単二、単三などの1.5Vの乾電池をDCモーターにつないで見ると、モーターは簡単に回り出します。手持ちのもので実験してみたら、赤線を+(プラス)、青線を-(マイナス)に繋ぐと、右回転(時計回り)を始めました。
今度は、乾電池の向きを逆にして、赤線を-(マイナス)、青線を+(プラス)に繋ぐと、左回転(反時計回り)を始めました。どうやらDCモーターは、電池の向き(極性)を逆にすると、逆に回転するようです。(え?そんなこと誰でも知ってる?)
モーターの回転方向を変えるのに、いちいち乾電池をつなぎ直しているのでは大変なので、スイッチ操作でワンタッチで変えられるようにしたのが、下の回路です。
スイッチ1と4をONにして、スイッチ2と3をOFFにすると、モーターの赤線が乾電池の+(プラス)につながり、青線が-(マイナス)につながるのが分かりますか?つまり、モーターは右回転します。
今度は、スイッチ1と4をOFFにして、スイッチ2と3をONにします。すると、モーターの赤線が+(プラス)、青線が-(マイナス)につながります。なので、モーターは左回転します。乾電池の赤線/青線と、モーターの赤線/青線が、互いに色違いにつながる様子が分かりますか?
この回路では、スイッチ1と3、またはスイッチ2と4を同時にONにすると、乾電池の+(プラス)と-(マイナス)がショートするので、してはいけない操作です。
全てのスイッチをOFFにすると、乾電池もモーターも、何にもつながっていない状態(オープン状態)になります。回転中のモーターに対して全てOFFにすると、惰性で少し回転を続けて、すぐに勝手に止まります。
スイッチ1と2、またはスイッチ3と4をONにすると、モーターの赤線と青線がショートします。回転中のモーターに対してこの接続を行なうと、モーターにブレーキが掛かります。モーターは電気を与えると自力で回転しますが、逆に無理やり外からの力で回転させると発電します。ママチャリ自転車のライトのダイナモが良い例です。回転中のモーターの両端子をショートさせると、その場で発電機として働き、ショートさせた回路には大きな電流が流れます。この電流によって、今度は回転を止める方向に回転力が発生し、ブレーキとして働きます。
【モータの制御】
モータをコンピュータで制御する時の基本はOn/Off制御です。
つまり、モータの起動・停止だけで制御します。
起動・停止だけで制御できるものは数多く、すべてのモータ
制御の基本になります。
【制御基本回路】
モータをOn/Off制御する時の基本回路には幾つかあります。
(1) トランジスタ駆動(エミッタ負荷)
下図の回路としてトランジスタをOn/Offすることで、モータ
をOn/Offします。しかし、この回路はトランジスタを完全に
飽和したOn状態にはできず、Vceが大きいので電圧ロスが
大きくなってしまいます。
動作としては、自動的に負帰還が働くため動作は安定です。
このため、簡易な速度制御を行うためオペアンプを追加した
回路が使われます。
この場合、トランジスタでの電力ロスがそのまま熱となり
ますので、トランジスタの熱対策は十分行う必要があります。
(2)トランジスタ駆動(コレクタ負荷)
モータをトランジスタのコレクタの負荷としたもので、トラン
ジスタを完全に飽和したOn状態で駆動できるため、ドライブ
能力が大きく電圧ロスも少なく出来ます。
従って、一般的にはこの回路が多用されています。
(3)逆起電力の処理
トランジスタがOnとなってモータが回っている間には、モータ
のコイルにはエネルギーが貯えられています。
そしてトランジスタがOffとなると、そのエネルギーを放出しよう
とするため、モータのコイルの両端には、プラスマイナスが逆向
きの起電力が発生します。
この電圧は非常に大きくなるため、そのままではトランジスタが
破壊されてしまうこともあります。
そこで、この対策として、コイルをショートさせて残っているエネ
ルギーを瞬間的に電流として流してしまい、逆起電力を抑制して
しまうようにします。
この働きをするのが下図のダイオードの働きで、逆向きの
起電力のみショートさせ、通常の電圧に対しては高抵抗となり
何もしないことになります。
【Hブリッジ制御回路】
モータのOn/Off制御は上記の回路で問題無く出来ます。しかし
回転の向きを変えたい時には、どうしたら良いのでしょうか。
モータに加える電圧のプラスマイナスを逆にすればモータは
逆転するのですが、上記回路ではそれは難しいことです。
そこで、単一の電源でモータに加える電圧の向きを変えられる
回路として考案されたのが、「Hブリッジ回路」(別項でトラブル対応として説明)です。
基本構成は下図の様になっており、H型をしていることから
こう呼ばれています。
基本動作は、Q1とQ4のトランジスタだけを同時にOnとすると、青線の様に電流が流れ、モータは正転します。
逆にQ2とQ3だけをOnとすれば、赤線の様に電流が流れ、モータは逆転することになります。
さらにQ3とQ4だけを同時にOnとするとモータにブレーキをかける動作となります。
【モータドライバIC】
最近は、モータドライブ用の専用ICがあり、これらには上記
のHブリッジが内蔵されているものがほとんどですので、
トランジスタ等のディスクリート部品で組むことはほとんど必要
が無いようになっています。
当然のことながら、逆起電力吸収用のダイオードも内蔵されて
いますが、それ以外に熱遮断回路や過電流保護回路も内蔵
されています。
下記はこのモータドライバの代表的なICです。
TA7257P
・出力電流 1.5A(ave) 4.5A(peak)と大容量
・モードは正転、逆転、ストップ、ブレーキの4モード
・逆起電力吸収用ダイオード内蔵
・熱遮断、過電流保護回路内蔵
・動作電源電圧 6~18V
TA7291P
・最大電源電圧 : 4.5~20V
・出力電流 : 1.0A(平均) 1.5A(最大)
・その他 熱遮断回路内蔵
出力端子プロテクタ回路内蔵
逆起電力吸収用ダイオード内蔵
入力ヒステリシス回路内蔵
スタンバイ回路内蔵
これらのICの中身は下図の様になっていて、Hブリッジが内蔵
されている。
【実際の使用例】
モータ制御用ドライバICの実際の使用例の回路は下図の様に
なります。PICに接続するのは、IN1,IN2の2ラインだけで、これ
で正逆転、ストップを制御出来ます。
下図はラジコン自動車の車載側のコントローラで、2個のモータ
をラジコン受信機からのシリアル信号を解析してパルス幅に応じ
て前進後進の制御をします。